ACCOUNTING STANDARDS BRIEF / コーポレートガバナンス
2021年6月以来、約5年ぶりの改訂(2026年7月21日公表)。改正の概要・主要改正点・企業で求められる対応・対応ワークシート・一問一答を、下のタブで切り替えて読めます。各タブは「簡単版/詳細版」で深さを切り替えられます。
① 改正の概要
まず全体像をつかむためのタブです。改正の趣旨、主要なポイント、企業で求められる対応を順に整理します。
今回の改訂のキーワードは「成長投資の促進」と「コードの実質化」です。形式的な「守りのガバナンス」にとどまらず、企業が中長期的な企業価値の向上に向けた本質的な取組みに注力できるよう後押しすることが狙いです。
そのために、「コンプライ・オア・エクスプレイン」の対象となる原則は抽象的・概念的な記述に絞り込み、具体的な内容・趣旨・背景は新設の「解釈指針」に移しました。原則をスリムにして、各社が自社の状況に応じて「趣旨・精神に沿って実践する」ことを促す改訂です。
2013年の「日本再興戦略」以来、コーポレートガバナンス改革は成長戦略の一環として進められてきました。コードは元来、不祥事防止などの「守りのガバナンス」だけでなく、健全な企業家精神を発揮させ「稼ぐ力」を高める「攻めのガバナンス」の実現に主眼を置いています。2015年の適用開始から十余年を経て、改革には一定の進捗が見られる一方、「形式的な対応にとどまらず、企業と投資家双方の取組みの実質化が重要」との指摘がなされていました。
今回の改訂は、プリンシプルベースの精神に立ち返る「コードの実質化」を狙いとし、原則を「コンプライ・オア・エクスプレイン」の対象として抽象的・概念的なものに限定したうえで、実効的な実施を支援する具体的内容・趣旨・背景を記載した「解釈指針」を新設しました。あわせて、コードの趣旨・精神を再周知する「序文」を新設し、(1) コードは市場における中長期の投資を促す効果も期待していること、(2) コンプライ/エクスプレインのいずれを選ぶ場合でも理由を丁寧に説明することが投資家との建設的な対話に資すること、を明記しています。
内容面の改正は、大きく次の4つの柱に整理できます。詳しくは「② 主要な改正点」タブを参照してください。
| 柱 | 要点 |
|---|---|
| 1. 経営資源の配分 (成長投資) | 成長の道筋を構築し、成長投資(設備・研究開発・人的資本・知財等の無形資産)や事業ポートフォリオ見直しで具体的に何を実行するかを説明。現預金等の有効活用を不断に検証。 |
| 2. 取締役会の 機能強化 | 独立社外取締役の役割・質・数・独立性の確保、取締役会事務局(コーポレートセクレタリー)の機能強化、リスク管理(サイバー・経済安保・サプライチェーン等)。 |
| 3. 有価証券報告書の 総会前開示 | 有報を株主総会前に提出することを権利行使環境の重要例として追記(総会3週間以上前が最も望ましい)。 |
| 4. ステークホルダー との協働 | 人的資本への投資・適切な分配、取引先との公正・適正な取引などを解釈指針に例示。 |
当面、上場会社に求められる対応の骨子は次のとおりです。具体的な進め方は「③ 求められる対応」タブ、自社の棚卸しは「④ 対応ワークシート」タブで行えます。
原則+補充原則の三層
プリンシプル化・スリム化
構成の方向(基本原則4・補充原則区分廃止・解釈指針新設)は改訂版コード本文で確認。原則数の整理(概ね31→26)は新旧対照表参照。
② 主要な改正点の解説
改訂の中身を、4つの柱に沿って解説します。簡単版は要点のみ、詳細版は原則・解釈指針の具体や事例集の参照を含みます。
取締役会の役割として成長投資に向けた取組みの重要性が強調されました。成長の道筋を描き、何に投資するかを具体的に説明し、資源配分が適切かを検証することが求められます。
原則において、取締役会の役割・責務として次の3点が明記・強調されました。
取締役会がより実効的に監督機能を果たすため、①独立社外取締役、②取締役会事務局、③リスク管理の3点が強調されました。
独立社外取締役が担う監督機能をより効果的に果たすため、その役割・責務、質・数の確保、独立性確保の重要性が原則・解釈指針で強調されました。いずれはグローバルに活躍するプライム市場上場企業について過半数の独立社外取締役が選任されるべき、との指摘にも言及されています。
議長や独立社外取締役を含む取締役を支援する重要な役割を果たす事務局の機能強化を推進すべき旨が解釈指針に追記されました。
リスク管理に関する取締役会の責任が強調され、体制整備の考慮事項としてサイバーセキュリティリスク、国際的な経済安全保障(地政学的要因)によるサプライチェーン途絶リスク、技術等の情報流出リスクへの対応が含まれ得ることが解釈指針に例示されました。
投資家の意思決定に有用な情報を含む有価証券報告書を、株主総会の前に提出することが、株主の権利行使環境を整える重要な例として原則に追記されました。
解釈指針では、有報は株主総会開催日の3週間以上前に提出されることが最も望ましく、選択肢として株主総会の開催時期の後ろ倒しも含めて検討することが考えられる旨が補足されています。
株主以外のステークホルダーとの協働の例として、人的資本への投資・適切な分配、取引先との公正・適正な取引が解釈指針に追記されました。
持続的な成長と中長期的な企業価値の創出のためには、株主をはじめとするステークホルダーとの適切な協働が不可欠であり、専ら株主還元に頼る短期目線ではなく、中長期的な価値向上に向けた取組みが期待される、という趣旨に沿った例示です。
改訂と同時に、金融庁・東証は「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集2026」(2026年7月21日)を公表しました。プライム・スタンダード市場の24社へのインタビューを集約・分析したもので、取組みを一律に要請するものではなく、各社が参照するための他社事例集です。
| 章 | 主な中身 |
|---|---|
| Ⅰ 取締役会の役割・責務 | あるべき姿の議論、執行への権限委譲とモニタリングボード化、付議基準・金額基準の見直し、CEOサクセッション(指名委員会が次期CEO候補の選定・育成にコミット)。 |
| Ⅱ 社外取締役に関する取組み | 執行・事務局との信頼関係の構築、投資家との対話、経営会議の傍聴、事業所見学・現場理解による知見の活用。 |
| Ⅲ 取締役会事務局の体制・役割 | 事務局機能の組織・体制上の工夫、議長との入念な事前連携・出席者への事前説明、取締役の真意把握と情報非対称性の解消。 |
| Ⅳ 取締役会の実効性評価 | 評価の位置づけ、外部機関の利用、評価対象・意見収集方法、評価結果の活用、課題への取組み状況や今後の方針の開示事例。 |
| Ⅴ その他(アクション・プログラム関連) | サステナビリティを意識した経営、コーポレートカルチャー、レジリエンス、人的資本経営。 |
③ 企業で求められる対応の詳細
適用スケジュール、担当部門ごとの動き、コンプライ/エクスプレインの考え方を整理します。
上場会社は、遅くとも2027年7月末日までに、改訂版コードに関する事項を記載したコーポレート・ガバナンス報告書を提出する必要があります。
各原則自体に法令上の実施義務はありませんが、実施しない場合はその理由を説明すること(コンプライ・オア・エクスプレイン)が東京証券取引所の有価証券上場規程上求められます。自社の事情に照らし、実施する(コンプライ)か、実施しない理由を説明する(エクスプレイン)かを選びます。どちらを選んでも丁寧な説明が求められます。
ひな型的でない具体的な説明を
「丁寧なエクスプレイン」
| テーマ | 主担当(例) | 初動の例 |
|---|---|---|
| 成長投資・資源配分 | 経営企画・財務・IR | 成長戦略と資源配分(キャピタルアロケーション)の説明方針を整理。現預金・政策保有・遊休資産の有効活用を点検。 |
| 取締役会の機能強化 | 取締役会事務局・法務・総務 | 社外取締役の員数・独立性・スキルを棚卸し。事務局体制とリスク管理(サイバー・経済安保等)の所管を確認。 |
| 有報の総会前開示 | 経理・財務・法務 | 総会・監査・開示スケジュールを引き直し、3週間以上前開示や総会後ろ倒しの可否を試算。 |
| ステークホルダー協働 | 人事・サステナビリティ・調達 | 人的資本投資・分配、取引先との公正取引の現状と開示を整理。 |
| CG報告書・開示 | IR・法務・経営企画 | 原則ごとにコンプライ/エクスプレインを判定し、説明文のドラフトを準備。 |
部門区分は一般的な例です。自社の体制に合わせて読み替えてください。
④ コーポレートガバナンス対応ワークシート
改訂の要点ごとに、対応の要否・実施する場合/しない場合の説明事項・現状の対応内容を記入します。すべて記入すると対応サマリーを表示し、CSV / Markdownで書き出せます。入力はこのブラウザに自動保存されます(サーバーには送信されません)。
⑤ 一問一答(QA)
経営者・担当者から出やすい疑問を一問一答で整理しました。詳細は各タブ・一次資料をご参照ください。