企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」/同適用指針第33号
基準の解説(わかりやすい版/詳細版)・会社提示用手順書・IFRS第16号との相違点・新旧比較を、下のタブで切り替えて読めます。
ACCOUNTING STANDARDS BRIEF / 新リース会計基準
何が変わるのか/いつからか/今すぐ何をすべきか 最短で理解するための概要資料
本資料の前提:
本資料は、対象会社が上場会社であり新リース会計基準の強制適用対象であること(強制適用初年度=2028年12月期)を前提としています。
基準は2027年4月1日以後に開始する事業年度から原則適用されます。
12月決算の会社は事業年度が1月1日開始のため、2027年12月期(2027/1/1開始)はこの基準日より前に始まっており対象外です。
次の2028年12月期(2028/1/1開始)から強制適用となります。
これまでは「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」で扱いが分かれ、オペレーティング・リースは貸借対照表に出てきませんでした(オフバランス)。
新基準では、短期・少額の例外を除き、すべてのリースを資産・負債として貸借対照表に計上(オンバランス)します。
※この大きな変更は借りる側(借手)の話です。
貸す側(貸手)の会計処理は従来のファイナンス/オペレーティングの区分が維持され、大きな変更はありません。
以下は借手側の説明です。
企業会計基準第34号 第49項(使用権資産の表示)・第50項(リース負債の表示)
大手監査法人各社(EY・KPMG・PwC・デロイト トーマツ)が共通して示している移行プロセスは、おおむね次の4段階です。
どんな契約があるかの棚卸し、資産・負債・損益への概算影響の把握
会計方針・簡便処理の金額基準・割引率方針を決定(最も重要な段階)
リース台帳の整備、本番前の試算、会計システムへの登録方法の確立
期首の経過措置適用、決算・注記対応、税務申告調整
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 使用権資産 | リース契約で「使う権利」を得た資産のこと。貸借対照表の固定資産に計上される新しい勘定科目。 |
| リース負債 | 将来支払うリース料を今の価値に割り引いて計上する負債。 |
| オンバランス/オフバランス | 貸借対照表に載る(オン)か載らない(オフ)か。新基準では原則すべてオンバランス。 |
| 短期リース | リース期間が12か月以内の契約。簡便的に、資産・負債を計上せず費用処理できる。 |
| 少額リース | 金額が小さいリース。目安として新品時の価額300万円以下、またはIFRS由来の概ね5,000米ドル以下の基準があり、社内規程での金額基準の明文化が必要。 |
| 割引率 | 将来のリース料を現在価値に割り引くための利率。リースの内在利率、それが分からない場合は借手の追加借入利率を使う。 |
| 経過措置 | 新基準へ移行する初年度に選べる、実務負担を軽くするための簡便的な計算方法の選択肢。 |
| 会計システムでの実務運用 | リース台帳(表計算等)で計算した金額を、会計システムの固定資産(使用権資産)・負債勘定(リース債務)に登録し、毎期振替伝票で計上する運用を想定。 |
ACCOUNTING STANDARDS BRIEF / 新リース会計基準
基準・適用指針の体系から借手の会計処理、簡便処理、経過措置、税務、会計システムへの計上実務まで実務論点を総覧
本資料の前提:
本資料は、対象会社が上場会社であり新リース会計基準の強制適用対象であること(強制適用初年度=2028年12月期)を前提としています。
| 文書 | 内容 |
|---|---|
| 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」 | 会計処理・開示の本体基準。2024年9月13日公表、2025年4月23日に軽微修正(「借手」「貸手」定義の「企業」→「者」、実質変更なし)。 |
| 企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」 | 基準の具体的な適用方法・数値例を定める指針。設例集を含む。 |
| 適用指針第33号 設例 | リースの識別・リース期間判定等の実務適用例(設例8:普通借家契約等における借手のリース期間、等)。 |
新基準第59項により、以下が本基準の公表に伴い適用終了。
次の(1)〜(3)を除き、リースに関する会計処理・開示に適用される。
JICPAは新リース基準に特化した独自の実務指針は発行していない。
会計制度委員会研究報告第12号、業種別委員会実務指針第19号・53号・65号、監査・保証実務委員会実務指針第90号の用語整合(「リース取引」→「リース」、「リース資産」→「使用権資産」、「リース債務」→「リース負債」)等の改正を実施(2024年9月13日)。
原則適用:2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から。
早期適用:2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から可能。
12月決算会社への当てはめ:
| 事業年度 | 開始日 | 判定 |
|---|---|---|
| 2026年12月期 | 2026/1/1 | 早期適用が可能な最初の期 |
| 2027年12月期 | 2027/1/1 | 2027/4/1より前開始のため対象外(原則適用は不可) |
| 2028年12月期 | 2028/1/1 | 強制適用の初年度(原則適用がここから始まる) |
従来リースと認識していなかった契約(サービス契約・業務委託契約・電力/燃料供給契約・賃借契約等)にも、次の2要件を満たせば「リースを含む」と判定される。
旧基準(第13号)ではこの「リースの識別」の定めが明確にされておらず、新基準で新たに導入された考え方(IFRS第16号の考え方を踏まえて体系化)。
短期・少額の例外を除き、すべてのリースについて単一モデルで使用権資産とリース負債をB/Sに計上する。
旧基準のファイナンス・リース/オペレーティング・リースの2区分による会計処理の相違は、借手側では廃止された。
| 項目 | 算定方法 |
|---|---|
| リース負債 | 残リース料を割引率で現在価値に割り引いた金額 |
| 使用権資産 | リース負債の額+前払リース料+当初直接費用+原状回復コスト見積り等 |
| 項目 | 会計処理 |
|---|---|
| 使用権資産 | 原則として減価償却(原則リース期間にわたり定額等で償却) |
| リース負債 | 利息法により、①利息費用の計上(残高×割引率)、②リース料支払いによる元本の減少 の2要素で事後測定 |
P/L上は「減価償却費」+「支払利息」の合計が費用計上される。
利息は残高に対して計算されるため契約前半に多く計上される逓減型のパターンとなる(旧オペレーティング・リースの定額賃借料計上とは異なる)。
リース期間中に支払条件が変更される場合、リース負債の見直しを実施(基準第40項)。
延長・解約オプション行使に伴うリース負債の調整規定もあり(基準第39項)。
| 優先順位 | 割引率 | 備考 |
|---|---|---|
| ① 第一優先 | 貸手の計算利子率(内在利率に相当) | リース料等から逆算される利率。知り得る場合はこれを用いる |
| ② 次点 | 借手の追加借入利子率(増分借入利率) | ①が容易に入手困難な場合に使用 |
旧基準では割引率の定義が曖昧であったが、新基準ではこの優先順位が明確化された。
リース期間=解約不能期間+「行使が合理的に確実」な延長オプション期間−「行使が合理的に確実」な解約オプション。
「実質的に行使される可能性」は、延長・解約オプション行使の経済的インセンティブの有無で判断する。
旧基準に比べ、判断の幅が広がり期間が長期化しやすい傾向がある。
設例8-1〜8-5(適用指針第33号 設例)に、普通借家契約・各種オプション条件下での判断例が示されている。
リース期間が12か月以内(購入オプションを含まない)のリース → 使用権資産・リース負債を計上せず、リース料を費用として認識する簡便処理を選択できる。
基準・適用指針には一律の固定金額基準は明示されていない。
実務上、次の2つの金額目安が使い分けられている(出典:KPMG「ココが知りたい!新リース会計基準Q&A」第2回)。
| 基準 | 目安金額 | 出所 |
|---|---|---|
| (a) | 新品時の原資産価額が300万円以下 | 旧適用指針第16号由来の基準を、新基準でも簡便的取扱いとして許容 |
| (b) | 新品時の原資産価額が概ね5,000米ドル以下 | IFRS第16号由来の少額リース基準 |
(a)(b)は使い分け可能とされる(KPMG Q&A第2回)。
いずれを採用するか、または併用するかを社内規程で明文化することが必須。
| 科目 | 表示区分 |
|---|---|
| 使用権資産 | 固定資産の部に独立掲記(または注記) |
| リース負債 | 流動負債・固定負債に区分して表示(基準第50項。使用権資産の表示は第49項) |
連結財務諸表作成会社は、個別財務諸表側でも別途リースの表示・注記が求められる(基準BC160〜BC162)。
貸手側は借手側ほどの大きな変更はなく、基本的に現行の枠組み(ファイナンス・リース/オペレーティング・リースの2区分)を維持しつつ、収益認識基準等との整合を図るための一部見直しが行われている。
| 分類 | 会計処理の概要 |
|---|---|
| ファイナンス・リース | リース料の現在価値でリース投資資産を測定。見積残存価額との差額は利息収入として認識。 |
| オペレーティング・リース | 利息費用の計上はなく、リース料をそのまま収益として認識。 |
サブリース取引(中間的貸手の例外的取扱い)、セール・アンド・リースバック取引(金融取引としての処理要件)についても個別の定めがある(デロイト トーマツ解説第2回参照)。
適用初年度の期首において、複数の簡便法から選択が可能。
旧基準(企業会計基準第13号)適用開始前のリース取扱いについても、会計基準第25項・第26項及び適用指針第5項〜第8項を適用して契約にリースが含まれているか否かを判断する経過措置が定められている(適用指針第113項〜第117項)。
会計基準の改正に合わせ、税制も改正されている。
会計と税務の差異は申告調整で対応する。
| 法人 | 特に使える資料 | 用途 |
|---|---|---|
| KPMGあずさ | 「新リース基準の概要と適用プロジェクトにおける留意点」セミナー資料(49頁、2024年11月) 「今知っておきたい新リース会計基準」KPMG Insight Vol.70(2025年1月) |
最も実務的。ロードマップ(2025/3期〜2028/3期のPhase1-3ガントチャート)、リースシステム3分類(A:ERPモジュール/B:固定資産システム/C:スタンドアロン)、契約情報収集プロセスの3方式比較、財務諸表・経営指標への影響図(図表3)、少額リース300万円/5,000米ドル基準の使い分け(Q&A第2回) |
| PwC Japan | PwC's View 54-03「新リース会計基準の適用に向けた準備およびスケジュール」(2025年3月) | 4フェーズのスケジュール構成が簡潔。表計算ベースの「スピード導入キット」の存在(先着20社・480万円税別、参考情報) |
| EY新日本 | 「リースに関する会計基準等のポイント/新リース基準への対応サポート」PDF(2024年9月) | 課題別の対応策整理表、4フェーズ図、対応実績カテゴリ(本社ビル賃借・店舗テナント・燃料輸送契約・転リース等) |
| デロイト トーマツ | 「新リース会計基準における経過措置」(2026年1月)、税制改正全3回(2025年10-12月) | 経過措置の組み合わせパターンの実務整理、税務申告調整の独自解説(無償PDFは確認できず、Web記事中心) |
リース台帳で算定した使用権資産・リース負債の金額を、会計システムへ登録・計上する運用を基本とする。
契約棚卸し、概算影響額(資産・負債・P/L・指標)の把握、GAAP差異分析
会計方針・注記方針・簡便処理の金額基準・割引率方針・リース期間判定ガイドラインの決定、ポジションペーパー作成(最重要フェーズ)
台帳/システム整備、試算(ドライラン)、内部統制整備
期首経過措置適用、決算・注記、監査対応
ACCOUNTING STANDARDS BRIEF / 新リース会計基準
2028年12月期(強制適用初年度)に向けて、会計士が会社とともに進める実行ステップ
本資料の前提:
本資料は、対象会社が上場会社であり新リース会計基準の強制適用対象であること(強制適用初年度=2028年12月期)を前提としています。
本手順書は、新リース会計基準(企業会計基準第34号)への移行を、会計士が会社の実務を支援しながら進めるための実行ステップです。
ステップ1からステップ7まで順に進めます。
各ステップには「目的」「会計士の作業」「会社にお願いする資料・作業」「完了条件」を明記しています。
会社にご協力いただきたい点は各ステップの「会社にお願いする資料・作業」欄をご覧ください。
ご不明点は会計士までお問い合わせください。
会社が2028年12月期(2028年1月1日開始)から強制適用となることを前提に、期首(2028年1月1日)から逆算したスケジュール例です。
早期適用(2026年12月期から可能)を選択する場合は、全体を約2年前倒しする必要があります。
| フェーズ/ステップ | 〜2026年前半 | 2026年後半 | 2027年前半 | 2027年後半 | 2028年1月〜 |
|---|---|---|---|---|---|
| ステップ1:契約棚卸し | |||||
| ステップ2-3:識別判定・方針決定 | |||||
| ステップ4:台帳・会計システム設定 | |||||
| ステップ5-6:経過措置選択・ドライラン | |||||
| ステップ7:本番適用 |
どの部署に、どのようなリース契約・賃貸借契約・サービス契約があるかを全社的に洗い出します。
新基準の対象となりうる契約を網羅的に把握する(移行実務の起点)。
ステップ1で洗い出した契約1件ごとに「リースを含む契約」に該当するかを判定します。
各契約が新基準上の「リース」に該当するかを判定し、対象契約を確定する。
従来「賃貸借」と意識していなかったサービス契約等にもリースが含まれる場合があります(詳細版資料 4章参照)。
移行にあたり会社として決定すべき事項を確定します。
最も重要なステップです。
少額・短期リースの金額基準、割引率の方針、リース期間判定の考え方等、会社としての会計方針を決定する。
対象契約について、使用権資産・リース負債の当初測定額と償却・利息スケジュールを計算し、会計システムへの登録方法を確立します。
リース台帳(表計算等)で計算した金額を、会計システムの固定資産(使用権資産)・負債勘定(リース債務)に反映できる状態にする。
リース台帳(表計算/専用ツール)で計算した金額を、会計システムに登録する運用を基本とします。
適用初年度期首に選択する経過措置(簡便法)を決定し、期首仕訳を作成します。
経過措置の組み合わせを決定し、適用初年度期首の使用権資産・リース負債・利益剰余金への影響額を確定する。
選択の組み合わせにより期首利益剰余金が変動するため、複数パターンの影響額を比較したうえで決定します。
本番適用前に、実際の数値を使って一度試算(ドライラン)を行い、問題点を洗い出します。
本番適用前に台帳・仕訳・開示資料の作成プロセスを一通り試行し、不備を事前に発見・修正する。
適用初年度の決算において、本番の会計処理・開示・税務申告調整を行います。
新基準に基づく決算・注記を確定し、法人税・消費税の申告調整を適切に行う。
ステップ1の契約棚卸しで、各部署へのヒアリングに使用する質問例です。
| No. | 質問 |
|---|---|
| 1 | 貴部署で契約している「賃貸借」「リース」と呼べる契約はありますか(不動産・車両・機械・OA機器・什器等)。 |
| 2 | 「サービス契約」「業務委託契約」の中に、特定の設備・車両・機器を独占的に使用する契約はありますか(例:専用車両による輸送委託、専用設備での製造委託等)。 |
| 3 | 各契約の契約期間(開始日・終了日)、更新の有無を教えてください。 |
| 4 | 契約に延長オプション・解約オプションはありますか。それを行使する予定・見込みはありますか。 |
| 5 | 月額・年額の支払額はいくらですか(変動費用がある場合はその内容も)。 |
| 6 | 契約の相手方(貸手)は、対象資産を別の資産に差し替える権利を持っていますか(代替可能性)。 |
| 7 | 資産の使い方(稼働時間・使用場所・使用方法等)を決めているのは会社ですか、それとも契約相手ですか。 |
| 8 | 現在、その契約はどのように会計処理されていますか(賃借料として費用処理、リース資産として計上、その他)。 |
| 9 | 契約の管理担当者・管理部署はどこですか。 |
| 10 | 今後、新たに契約する予定のリース・賃貸借はありますか。 |
A. いいえ。
12月決算の場合、原則適用の強制適用初年度は2028年12月期です。
2027年12月期(2027年1月1日開始)は基準の適用開始日(2027年4月1日)より前に始まるため対象外です。
早期適用を選ぶ場合のみ2026年12月期から可能です。
A. 対象になる可能性が高いです。
新基準では短期(12か月以内)・少額(社内規程で定める金額基準以下)を除き、原則すべての賃貸借がB/Sに資産・負債として計上されます。
A. 当面はリース台帳(表計算等)で当初測定額・償却スケジュール・利息スケジュールを計算し、会計システムへ登録・振替伝票で計上する運用を想定しています。
A. はい。
法人税ではリース期間定額法への統一等、消費税でもリース取引の判定に関する取扱いが整理されています。
会計と税務の差異は申告調整で対応します。
本基準はASBJ(企業会計基準委員会)が制定した日本基準です。
PCAOB(米国公開企業会計監視委員会)は監査人を監督する機関であり、会計基準の制定主体ではありません。
ACCOUNTING STANDARDS BRIEF / 新リース会計基準
共通点の詳述は行わず、差異のみを一次資料(ASBJ結論の背景・IFRS財団・大手監査法人公開資料)に基づき整理
企業会計基準第34号 結論の背景 BC13より:
「借手の会計処理に関してIFRS第16号と整合性を図る程度については、IFRS第16号のすべての定めを取り入れるのではなく、主要な定めの内容のみを取り入れることにより、簡素で利便性が高く、かつ、IFRSを任意適用して連結財務諸表を作成している企業がIFRS第16号の定めを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となる会計基準とする」
この設計方針ゆえ、借手の基本モデルは実質的に同一だが、以下の6点で明確な差異が生じている。
第34号はIFRS16ではなく米国基準Topic 842をベースに設計。
「フルペイアウトのリースか否か」で売却損益の全額即時認識か金融取引処理かを判定する点が、IFRS16の資産譲渡時の部分損益繰延モデルと根本的に異なる。
IFRS任意適用企業でも個別財務諸表でIFRS16流の処理を選択適用することは認められず、修正仕訳が必要(ASBJ結論の背景 BC91-95で明言)。
IFRS16は「新品時概ね5,000米ドル以下」という単一の目安(固定の数値基準ではない)。
第34号適用指針は①300万円以下(契約1件あたり、旧第16号由来)と②新品時概ね5,000米ドル以下(IFRS16と同様)のいずれかを選択適用できる(BC41-45)。
判定対象期間も「借手のリース期間」else「契約期間」を選択可(BC44)。
IFRS16はパラグラフ53(d)で少額リース費用の開示を要求。
第34号適用指針は「金額的重要性が乏しい」ことを理由に少額リースに係る費用の開示を求めない(短期リース費用の開示は両基準とも必要)(BC146)。
「中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合」の特例と「転リース取引」の特例をIFRS16にはない日本独自の任意規定として新設。
適用は任意(BC125-126, BC135-136)。
また、サブリースしている場合でもヘッドリースに少額リースの簡便的取扱いを適用できる(IFRS16はこれを禁じている)(BC136)。
IFRS16は原則適用2019年1月。
第34号は原則適用2027年4月1日以後開始事業年度(早期適用は2025年4月1日以後開始事業年度から可)。
公表から原則適用まで約2年半という長期リードタイムは「IFRS16の適用時期(2019年1月)に鑑み実務を国際的水準に近づける必要があった」ことが理由としてBC69に明記(IFRS16自体の適用日そのものは差異ではないが、日本の導入タイムラインの設計根拠としてIFRS16が直接参照されている点が特徴)。
| 項目 | IFRS第16号 | 日本 第34号/適用指針第33号 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 基本モデル | 単一モデル(全リースで使用権資産・リース負債を計上) | 同左(単一モデル、BC39でIFRS16と整合させる旨明記)。差異なし(参考記載) | 第34号BC39/PwC's View Vol.54 p.17 |
| リース契約条件変更時に使用する割引率 | 状況ごとに「変更前の割引率」「変更後の割引率」のいずれを使うかを詳細に規定 | 詳細規定を取り入れず、簡素な定めに留めた(開発方針=簡素化を優先)。実務上は自社で合理的な取扱いを設計する必要 | 適用指針33号BC76 |
| 変動リース料(指数・レート連動)の将来変動の見積り | 開発時の議論では将来変動を見積るべきとの考え方も示されたが、最終的にはリース開始日時点のレートで固定 | IFRS16と同様の定めを採用(差異なし) | 適用指針33号BC46-49 |
| 無形固定資産(ソフトウェア等)への適用 | 借手による無形資産へのリース会計基準の適用は要求されていない(任意) | 同様に任意(旧第13号の実務を変えないため)=差異なし | 第34号BC18 |
| 借地権・普通借地権の権利金等 | 概念自体が存在しない(日本固有の借地借家法上の論点) | 使用権資産に含めて表示。従来償却していなかった場合は償却しない方法を選択できる代替的取扱いを設けた。ただし定期借地権は償却必須(詳細は9章) | 適用指針33号BC168-169 |
| 事務所等の不動産賃貸借契約・自動車リース・サブリース型賃貸住宅事業・定期傭船契約の識別 | リースの定義に基づき判定 | 業界団体等から「サービス性が強い」としてIFRS16と異なる取扱いを求める意見が出たが、審議の結果、IFRS16と異なる取扱いは設けなかった(差異なし)。ただし定期傭船契約のIFRS16設例は「基準の求める判断と誤解されるおそれ」から不採用 | 第34号BC31 |
| 項目 | IFRS16 | 第34号 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 金額の目安 | 新品時「概ね5,000米ドル程度」(IFRS16結論の根拠に記載された開発当時2015年の目安。基準本文に固定数値なし) | ①300万円以下(契約1件あたり、旧適用指針第16号由来)/②新品時概ね5,000米ドル以下(IFRS16と同様)のいずれかを選択適用(企業単位で選択、契約ごとの選択は不可) | IFRS16結論の根拠(IASB, 2016)/適用指針33号BC41-45 |
| 判定基準の性質の違い | 数値基準というより「新品時の価値」に着目した定性的目安 | ①は明確な300万円という定量基準、②はIFRS16準拠の定性的目安。ASBJ自身も「適用単位の定め方・数値・条件が異なるため、どちらが広範か一概にいえない」と結論の背景で述べている | 適用指針33号BC41 |
| サブリースしている場合のヘッドリースへの適用可否 | ヘッドリースには少額リースの簡便的取扱いを適用できない | 実務負担を理由にこの制限を採用せず、サブリースしていてもヘッドリースに少額リース簡便的取扱いを適用可能 | 適用指針33号BC136 |
| 費用の開示 | 開示必須(IFRS16.53(d)) | 開示不要(重要性が乏しいことを理由に明示的に開示対象から除外) | 適用指針33号BC146 |
| 項目 | 差異の有無 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|---|
| リースの識別の判定ロジック(特定資産+使用支配権) | 差異なし | 基本的にIFRS16の定めを踏襲。細則的ガイダンス・設例は「取捨選択」して導入 | 第34号BC22, BC30 |
| リース期間の決定(延長・解約オプションの「合理的に確実」性) | 差異なし | IFRS16の考え方と整合的に定めた | 第34号BC34-36 |
| リースを構成する部分/構成しない部分の区分(非リース構成部分の合算選択) | 差異なし | IFRS16と同様の実務上の便法(構成部分をまとめてリースとして処理する選択のみ認め、非リースとしてまとめる処理は不可という制約も同一) | 第34号BC32-33 |
| 変動リース料の取扱い | 差異なし | 指数・レート連動の将来変動を見積らない取扱いをIFRS16と整合させた | 適用指針33号BC46-49 |
| 割引率の基本的な優先順位(リースの計算利子率→増分借入利率) | 差異なし | 用語は「貸手の計算利子率」だが概念はIFRS16の「リースの計算利子率」と同義 | 適用指針33号BC66 |
| 契約条件変更時に使用する割引率のルール | 差異あり | IFRS16は状況ごとに詳細規定。第34号は簡素化のため詳細規定を非採用 | 適用指針33号BC76(再掲) |
| 項目 | IFRS16 | 第34号(Topic 842ベース) |
|---|---|---|
| 設計の参照基準 | IFRS16本体(IFRS15の収益認識要件で売却該当性を判定) | 米国会計基準Topic 842を参考に設計(IFRS16ではない) |
| 売却該当性の判定 | 資産の譲渡がIFRS15の収益認識要件(一時点での支配移転)を満たすかどうかで判定 | 収益認識会計基準等により売却に該当するか否かに加え、「フルペイアウトのリースか否か」(借手が経済的利益のほとんどすべてを享受し、コストのほとんどすべてを負担するか)を判定基準として追加 |
| 会計処理(売却に該当する場合) | 買手に移転した権利部分の損益は即時認識、売手が引き続き保有する権利部分(リースバック相当)の損益は繰り延べる(部分認識モデル) | 売却該当かつフルペイアウトに該当しない場合、譲渡損益を全額即時認識(Topic 842の考え方を採用。損益の按分・繰延という概念を採用しない) |
| フルペイアウトに該当する場合 | 該当概念なし | 資産の譲渡は売却に該当しないものとみなし、金融取引として会計処理(譲渡損益を認識しない) |
| IFRS任意適用企業への配慮 | — | IFRS16と同様の会計処理を選択適用することを認めない(BC93-95で意図的に却下。「収益認識会計基準等との整合性を優先させる会計上の考え方の相違によるもの」と明記) |
| 開示 | IFRS16.53の一般開示に準ずる | 売却損益の内訳、フルペイアウトに該当し金融取引処理した場合の資産の内容等、日本独自の開示を追加要求(開示で情報を補う設計) |
| 項目 | IFRS16 | 第34号適用指針 |
|---|---|---|
| 中間的な貸手のリース分類の参照対象 | ヘッドリースの使用権資産を参照して分類(Topic 842はヘッドリースの原資産を参照する点でIFRS16と異なる) | IFRS16と同様に使用権資産を参照(差異なし) |
| ヘッドリースに対してリスクを負わない場合の例外処理 | 規定なし(例外を設けていない) | 日本独自の任意規定を新設(3要件をすべて満たす場合、オフバランスで純額の収益のみ計上できる) |
| 転リース取引の特例 | 規定なし | 現行の企業会計基準第13号の定めを踏襲し、IFRS16にない任意の特例として存続(貸借対照表にリース投資資産・リース負債を計上しつつ、損益計算書は転リース差益の純額表示) |
| サブリースしている場合の少額リース簡便的取扱いの可否 | ヘッドリースには適用不可 | 適用可(実務負担軽減を優先) |
| 項目 | IFRS16 | 第34号/適用指針33号 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 開示の基本設計思想 | 開示目的(財務諸表利用者のニーズ)を起点に、定性的・定量的情報の例を多数提示する詳細主義 | 「開示目的を達成するために必要な情報」という同じ設計思想を採用しつつ、IFRS16の詳細ガイダンスの一部は取捨選択 | 適用指針33号BC137 |
| 少額リース費用の開示 | 必須(IFRS16.53(d)) | 不要(2章参照) | 適用指針33号BC146 |
| 短期かつ少額リースの費用開示への算入 | 明文の除外規定なし | 短期リース費用の注記から除外を選択可(開示コスト・便益を考慮した緩和) | 適用指針33号BC147 |
| 貸手のリース債権の構成要素(リース料債権部分/受取利息相当額)の開示 | 要求あり | 現行第13号にはなかった開示を新設(IFRS16と整合的にする形で拡充) | 適用指針33号BC155 |
| 加重平均割引率(借手の追加借入利子率)の開示 | 要求あり | 同様に要求(差異なし) | 適用指針33号 第109項近辺(BC159文脈) |
| 個別財務諸表(単体)における注記 | 概念自体が存在しない(IFRSは連結財務諸表のみに適用され、日本の「個別財務諸表」という制度自体がIFRSの対象外) | 連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表においても別途、表示・注記が要求される(金融商品取引法上の実務要請) | 適用指針33号BC160-162 |
貸手側は「IFRS16及びTopic 842ともに抜本的な改正が行われていない」ことを理由に、基本的に現行の企業会計基準第13号を踏襲する設計であり、そもそも「IFRS16と整合させる」という開発方針の対象外(BC13)。
したがって借手ほど大きな差異はないが、以下の点で日本独自の定めが残る。
| 項目 | IFRS16の位置づけ | 第34号/適用指針33号 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 貸手のリース分類(ファイナンス・リース/オペレーティング・リースの二分法) | 廃止されていないが、IFRS16自体は貸手側の分類モデルを実質維持(借手側のみ単一モデル化)。この点は共通なので差異ではない | 現行の第13号の二分法を踏襲(差異なし) | KPMG Insight Vol.70 p.2 |
| ファイナンス・リース第2法(リース料受取時に売上高・売上原価を計上) | 該当する概念なし(IFRS16は現在価値ベースで売上高・リース投資資産を計上する枠組みのみ) | 廃止。収益認識会計基準との整合性を理由に、実質的に第3法(利息相当額のみ配分)に類似した処理へ統一。リース業において例外的に認められていた割賦基準も廃止 | KPMG Insight Vol.70 p.5, 図表2 |
| オペレーティング・リースの収益認識(フリーレント期間の扱い) | 定額法での計上が前提(収益認識の一般原則) | 従来「明確な定めなし」だったのを、フリーレント期間等を含む対象期間を通じて原則定額法と明確化(収益認識会計基準との整合性を意図) | KPMG Insight Vol.70 p.5 |
| 知的財産のライセンスの供与の適用範囲 | 貸手による知的財産のライセンスの供与は範囲外(原則) | 製造・販売以外を事業とする貸手(リース会社等)については、任意で本会計基準の適用を認める(IFRS16にはない選択肢) | 第34号BC17(※適用指針第71項(2)) |
| その他の無形固定資産のリース(貸手側) | 適用を任意とする定めがない(一律範囲外の整理) | 「広範に行われていない」ことと現行実務の継続を理由に、適用を任意とした(IFRS16より一段緩い) | 第34号BC18 |
| 貸手のリース期間 | 借手のリース期間と同様の考え方で決定するのが基本 | 借手のリース期間と同様に決定する方法と、現行基準の解約不能期間ベースの方法のいずれも選択可(IFRS16は前者のみが基本) | KPMG Insight Vol.70 p.4 |
| 項目 | IFRS16 | 第34号 |
|---|---|---|
| 原則適用 | 2019年1月1日以後開始する事業年度 | 2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度(早期適用は2025年4月1日以後開始事業年度から可) |
| 公表から原則適用までのリードタイム | 2016年1月公表→2019年1月適用=約3年 | 2024年9月公表→2027年4月適用=約2年半。ASBJはこの長さの根拠として「IFRS16の原則適用が2019年1月であったこと」を明示的に引用し、国際的な実務水準に日本の実務を合わせる必要性を理由の一つに挙げている(BC69(2)) |
| リースの識別に関する経過措置 | 実務上の便法として「契約がリースを含むか否かを見直さない」選択を容認(従前基準との差異が限定的なため) | IFRS16とは異なる経過措置を採用。第34号は「これまで第13号で会計処理されていなかった契約にリースが含まれると判断される場合がある」という日本固有の背景を踏まえ、①前期末時点で第13号を適用しているリース取引は見直し不要、②適用初年度期首時点で存在する第13号非適用契約は期首時点の事実関係で判定、のいずれか(または両方)を選択できる独自設計(BC165-166で「IFRS第16号とは異なる経過措置を取り入れることとした」と明言) |
| 遡及方法の基本形 | 修正遡及アプローチ(比較年度は遡及せず、累積的影響額を適用初年度期首の利益剰余金に加減)を含む複数の経過措置を提供 | 同様に、比較年度への遡及を求めず累積的影響額を適用初年度期首の利益剰余金に加減する方法を許容。IFRS16の経過措置を「我が国の会計基準を基礎とした場合に関連すると考えられる範囲で」可能な限り取り入れつつ、一部修正(第13号からの移行であることを踏まえた技術的調整)(BC164) |
以下は業界からIFRS16と異なる取扱いを求める意見が出たものの、ASBJの審議の結果あえて差異を設けなかった論点。
「差異があるはず」という思い込みによる誤りを防ぐために明記する。
ACCOUNTING STANDARDS BRIEF / 新リース会計基準
企業会計基準第13号(旧基準)と、2024年9月に公表された第34号(新基準)の差異を、借手の会計処理を中心に1ページにまとめた資料です。
旧基準の資料は新旧対照表でまとめています。
最大の変化は、これまで貸借対照表に載せなくてよかったオペレーティング・リース(賃貸借処理)が、原則すべて資産・負債として計上(オンバランス)されることです。
借手の主要論点について、主な変更点は以下のとおりです。
企業会計基準第34号/適用指針第33号(第20項=短期・第22項=少額・第37項=割引率)
旧基準は「所有に近いか(ファイナンス)/賃借に近いか(オペレーティング)」で二分し、扱いを変えていました。
新基準では借手について、この区分をやめ、どのリースも「資産を使う権利を買った」ものとして一様に会計処理します。
これまで注記にとどまっていた賃貸借契約が、使用権資産(資産)とリース負債(負債)として両建てで計上されます。
総資産・総負債が増え、自己資本比率やROAなどの指標に影響します。
企業会計基準第34号 第49項(使用権資産の表示)・第50項(リース負債の表示)
旧基準は費用を毎期均等に計上していましたが、新基準ではリース初期に損益影響が大きくなり、徐々に低減していきます(費用の総額は同じ)。
企業会計基準第34号(借手の事後測定:使用権資産の減価償却+リース負債の利息法)
新基準(第34号)の適用により、次の旧基準は適用終了します(第34号第59項)。
| 区分 | 基準名 | 扱い |
|---|---|---|
| 会計基準 | 企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」 | 適用終了 |
| 適用指針 | 企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」 | 適用終了 |
| 実務対応報告 | 実務対応報告第31号「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキーム…」 | 廃止 |
ここまでは借手の変更です。
貸手は、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分を従来どおり維持し、借手ほどの抜本的な変更はありません。
ただし収益認識会計基準との整合の観点から、リース/非リースの区分など一部の見直しがあります。